この「メイキング・オブ」は、毎週お一人の Vue コミュニティメンバーにスポットライトを当てるページです。 世界中でたくさんの人々が、Vue の製品ラインを使って素晴らしい作品を紡ぎ出しています。そんな皆さんに作品の作り方を解説してもらい、ノウハウを共有できれば、というのが、このページの狙いです。

妖精や精霊といった空想世界の生き物に魅了されている人々は、Poser と Vue を組み合わせて、自分の世界を現実のものにしています。 この愛らしい作品の作者 Craig John 氏は、森の精霊ドリュアスにどうやって命を吹き込んだのでしょうか?

 

メイキング・オブ "Forest Dryad"(森の精霊)by Craig John

このシーンで表現したかったのは、ドリュアスが木の陰からぴょこりと顔を出して、私たち人間を興味深げに見ている、という光景です。森の精霊ということで、肌のトーンは緑にしました。 私の頭のなかには「精霊が宿る森」の絶対的なイメージがあり、構図も何パターンか浮かんでいました。

Poserのパワー


まずは Poser で、キャラクターと衣装選びをしました。 バービーの着せ替えゲームにハマっている娘の気持ちがよくわかるひとときでした(笑) このドリュアスは木の向こうに立っている、ということを念頭に置いて、この段階でポーズもつけておきます。 ポージングの補助として、Poser で大きな円柱を作り、それを木の幹に見立てました。

設定が終わったら、OBJ 形式で書き出します。 Poser の肌のテクスチャはまったく触っていません。 肌の色は SkinVue 8 という素晴らしい Python スクリプトを使って、Vue で直接編集するつもりだったからです。 また、2 頭のレイヨウは Daz3Dの(Safari スターターパックの)Pronghorn を使い、ポーズづけしたあとに OBJ 形式で別々に書き出しました。 要素ごとに書き出しておくと、Vue で位置関係を自由に変えられるので便利です。

Vue での作業

森は、以前に作ったいくつかのシーンのテイストを取り交ぜて作ることにしました。 森の樹木には、背の高い幹と樹皮のカンジがイメージに合っていたので Scots Pine を選びました。 まずは地形からです。直接生成地形を平たくつぶして高低差をほとんどなくし、地形エディタで [ゼロエッジ] オプションをオフにしました。 多少のでこぼこはあるにせよ、山のような激しい起伏はつけたくなかったので、デフォルトの地形関数の [簡易フラクタル] をそのまま使っています。 地面のほとんどを草で覆うつもりだったのに直接生成地形を選んだ理由は、むき出しになる土の部分に低解像度のエリアが現れないようにしたかったからです。

この地形の位置と角度を変えて、四隅のうちのひとつにカメラが来るようにしました。こうすると地形を対角線上に眺めることになり、奥行きを最大限に利用できるのです。

太陽の光が地面に届く明るい森にしたかったので、樹木はあまり密に生やしたくありませんでした。というわけで、画面の奥に向かってどこまでも森が続いているという図を作るためには、この地形をうんと拡大するか、奥に地形をもうひとつ配置する必要がありました。そうしないと、森と空の境目がくっきり見えてしまいますからね。 草はあくまでも EcoSystem で生やそうと思っていましたから、1つの巨大な地形を使うのであれば手前の前景部分にだけ局所的にペイントするか(地形全体に EcoSystem で草を生やすとリソースが足りなくなります)、あるいは、背景用の地形をもうひとつ追加して、そこには草を生やさないか、という選択肢で悩みました。

Poser のコンテンツを読み込むと、さらに大量のリソースが必要になります。 そのため、ここから先のシーン要素については、できるだけポリゴン数を抑えなければ、と考えました。 

結局、図のように平面オブジェクトを追加して、最初に作った地形の向こうに配置し、横方向に途切れないように拡大しました。

前景の作業に戻りましょう! Scots Pine の松の木を 1 本追加して、カメラの前に配置します。 これが、ドリュアスが顔を出す「英雄樹」です。

まず、土が見えている部分を湿り気のある質感にするために、Rock My World - Mossy Bolders を読み込みました。 リソースを不必要に消費することなく、地表部分にディテールを与えたかったのです。

次に、EcoSystem 質感にして配置リストに Scots Pine を読み込み、密度を 0000% にして配置しました。 何回か [配置] ボタンを押し続けると、全体的な配置の状態がイイカンジになりました。 [他オブジェクトの近くで減少] オプションを有効にして、英雄樹に重ならないようにしています。

思ったとおりに配置ができたところで、地形の質感に EcoSystem レイヤーを追加しました。 これは、石を配置するためのレイヤーです。 地面を草だけで覆うと大変なポリゴン数になってしまうので、石を混ぜようという魂胆です。あちこちにばら撒きました。 [Sculpted Rocks - EcoRocks3] EcoSystem を読み込み、大きさと密度を調整します。 ここでもう一度、Scots Pine の EcoSystem レイヤーと同じように、[配置] ボタンを押して全体のバランスを見ながら配置を調整します。 [他オブジェクトの近くで減少] オプションで他のオブジェクトと重ならないようにし、下層質感である木のEcoSystem レイヤーに対する [親和性] と [反発] を調整して、木と石が地面をバランスよく覆うようにしました。

木と石の配置がうまくいったら、次は草の配置です。 Alpine Grass - Black Sedge Lush という草の EcoSystem を読み込んで、まず縮尺を決めます。 ポリゴン数を節約するために、密度はうんと間引いた状態にします。 この EcoSystem は前景地形の質感に別レイヤーとして追加し、[親和性] と [反発] の設定を使って他の要素と重ならないように配置します。

Vue の EcoSystem を触りはじめたころ、私は木と岩と草を同じレイヤーに配置して、他の要素との配分は [出現] 設定で調整していました。 ところが、あるとき自分のやり方が間違っていることに気づき、EcoSystem レイヤーを分けても [親和性] と [反発] で相互の干渉具合を細かく調整できるということを知りました。 

…いやあ、やっぱりマニュアルって読んだほうがいいですね :P

さあ、いよいよ Poser コンテンツをシーンに追加しましょう!

3 つのアイテムをそれぞれ読み込んで、位置を決めます。 ドリュアスは簡単で、考えていた場所に一発でおさまりました。レイヨウはドリュアスよりもずっと後ろにいて、体の一部が木に隠れるようなイメージを考えていたのですが、Scots Pine の根っこがどうにもウソっぽく見えるので、レイヨウを手前に出して根っこを隠すことにしました。 

次は SkinVue タイムです!

森の精霊にふさわしい肌の質感を作りましょう。ドリュアスを選択した状態で SkinVue プラグインを起動します。 肌のテクスチャを読み込んで、肌の色を薄い緑にします([Skin Tint] に緑色を指定して [Tone] スライダーを右端まで動かす)。眼の色も、この世の生き物ではないような幻想的な色合いにします。

最後の仕上げです!

手前の英雄樹がちょっと貧相に見えたので、なんとかしなければなりませんでした。 そこで、樹皮のテクスチャにツタ系の EcoSystem を追加することにしました。 Wabes Moss を使って、EcoSystem ペイントでヒイラギを部分的にペイントして、 大きさと密度を変えながら、幹の部分にふんだんに吹きつけました。

2 回テストレンダーしたところで問題を発見しました。好きだと思って選んだ Scots Pine の樹皮が、カメラに近いせいか、あまりキレイに見えないのです。 テクスチャをいじくりまわしても芳しい結果を得られなかったので、思い切って、他の樹皮のテクスチャと入れ替えました。

大気の設定

大気づくり、とくに森の中の大気は、これまでにさんざん思考錯誤を重ねてきました。 こういうことは、マニュアル 1 冊ですべて解決…というわけにはいきません。 私は Quadspinner の Dax Pandhi 氏の講演やチュートリアルで勉強して、たくさんのヒントを得ました。 このシーンの活気と美しさを最大限表現するために選んだ照明モデルは [グローバルラジオシティ] です。おかげで、木から跳ね返った光がドリュアスの肌を柔らかく照らしてくれました。 さらに何回かテストレンダーを繰り返してみて、影のエリアが暗すぎるように感じたので、[天空光強度] を 4.00 に、グローバルラジオシティの [ゲイン] を 0.50 に増やしました。 そして、画像全体が寒々しいトーンにならないように、[天空光全体色] を青からピンクに変えました。

[天空光強度] と [ゲイン] を上げたので、明るい部分が白飛びしないよう、太陽光の [露出] を少し下げる必要がありました。

どうもありがとう! Craig John