メイキング・オブ "Summoning"(召喚) by Tony Martin
Cornucopia 3D をご覧の方から、あるとき、この作品はどういうコンセプトで作ったのですか、という質問を受けました。 私の最初の心象風景は、山の頂上で別人格を呼び出す一人の女性、というものでした。 私の作品づくりの過程には、いつも新しい発見があります。そこでアイデアが変わっていくのも、創作という航海の一部なのです。 下のスクリーンショットは、このシーンを Vue で見たところです。
地形について
このシーンには 3 種類の地形を使っています。 手前の 2 つが直接生成地形で、いちばん遠いのが標準地形です。 奥の 2 つは、標準的な山脈をそのまま使っています。 カメラにもっとも近い地形は、この作品の主役(「ジェイド」と呼ぶことにしましょう)が座る丘で、作成後に縮小してあります。 さらに、左側が斜面になって頂上が平地になるように編集しました。 テクスチャにはQuadspinner Mineral Infinity コレクションの Monochromite 質感を選びました。 奥の 2 つには、Vue 標準の [岩と草地] 質感をあてています。 下のスクリーンショットは、地形の配置を示したものです。
植生について
手前の台地のグランドカバーには、Martin Frost の Grasslands バンドルに収録されている European Beach Grass から 3 種類の亜種を作成して配置しました。 彩りと多様性を加えるために、標準の [レッドフラワー] も少し混ぜています。 ひとつの EcoSystem にこれらを設定したあと、平地の部分にペイントしました。 また、LaurentR の Sculpted Rocks 2 コレクションにある岩と小石も配置しました。 EcoSystem の設定は、下のスクリーンショットを参考にしてください。
樹木について
画面右側の大木は、Late Spring Alder のインスタンスです。 主役の頭の上まで張り出している木が欲しいと思っていました。球体の放つ光で木の枝や葉が下から照らされるイメージがあったのです。
木を大写しにするこの手のシーンで、木に一切の変更を加えずにそのまま使うと、木の皮を巻きつけたパイプクリーナーのように、まるでウソっぽく見えてしまいます。 遠景に使う木ならばそれで問題ないのですが、クローズアップの場合はディテールレベルを上げなければなりません。 というわけで、木を編集します。 植生エディタで [x2] ボタンをクリックして、木のポリゴン数を増やします。 このシーンの場合は、少なくとも 100万ポリゴンを目安にして、これを繰り返しました。 途中で、葉と花弁のサブセットで [長さ] を +22、[乱数度] を +15、[しなやかさ] を +37、[カール] を +22 に増やしました。こうすると、葉の部分がただの板ポリゴンには見えなくなります。 植生エディタの設定は、下のスクリーンショットを参考にしてください。
レディ・ジェイドについて
メインキャラクターは Poser 2010 Pro で作成しましたが、7.0 以上であれば問題ないと思います。 Poser で位置決めをし、衣装を着せてポーズをつけたあと、保存して Vue に読み込んでいます。 Vue は Poser フィギュアをそのまま読み込めますから、シーンにキャラクターを追加するのはとても簡単です。読み込んだあとは、シーンの大きさに合わせて拡大縮小し、張り出した枝の下に座らせました。
大気について
まず New Latitudes 1 コレクションの Thunder Comes 2 を読み込んで、そこからイメージに沿って調整していきました。太陽の位置は、左奥の山頂のすぐ上に動かしました。 また、地表を這う濃い霧を表すために、下のほうに雲レイヤーが欲しいと思いました。 そこで、大気エディタで雲タイプ [濃密な積雲レイヤー] の雲レイヤーを作成しました。 地表を這わせるために、[高度] は 0 にして、[雲の高さ] はシーンのスケールに合わせて 20m にしました。 その他の設定は、次のとおりです。 [雲の量] = 76%、[密度] = 50%、[不透明度] = 50%、[鮮明度] = 45%、[羽] = 30%、[細かさ] = 41%、[高度変化] = 100%、[グローバル照度] = 30%、[影の密度] = 61%。
光る球体について
標準の球体オブジェクトを作成したあと、シーンのスケールに合わせてサイズ調整し、ジェイドの手のひらの上に配置して、浮かんでいる様子を出しました。 次に、ガラスコレクションの [泡2] の質感を適用しました。 球体のなかのフィギュアは Poser で用意し、Vue に読み込んで、球体におさまるように縮小しました。 光は点光源です。球体の内部に配置しています。 置き場所ですが、フィギュアを逆光にしたかったので、フィギュアの向こう側で、球体のできるだけ中心に置きました。 この点光源で、張り出した木の枝や葉が下から照らされ、ジェイドの顔にも柔らかい光があたって、シーンに独特の雰囲気が生まれました。 点光源の設定は、[カラー] が白、[強度] が 25 で、[柔らかさ] が10 です。 下のスクリーンショットは、シーンに点光源を配置したところです。
最後に
このシーンは、基本構成は一日でできましたが、その後だいたい一週間くらいは毎晩、とにかくいろんなところをいじって、最終的にはほとんど丸ごと変更しました。 最終レンダリングの画質オプションは [スペリオール] で、シングルコア i7 マシンでおよそ 18 時間かかりました。レンダリング時間の大半は、大気と低地の雲レイヤーの計算です。 Vue で作業するときはいつもそうですが、今回も、シーンがどんどん進化していくのを感じながら、とても楽しく作品を仕上げることができました。
どうもありがとう! Tony Martin