この「メイキング・オブ」は、毎週お一人の Vue コミュニティメンバーにスポットライトを当てるページです。 世界中でたくさんの人々が、Vue の製品ラインを使って素晴らしい作品を紡ぎ出しています。そんな皆さんに作品の作り方を解説してもらい、ノウハウを共有できれば、というのが、このページの狙いです。

作りたいもののイメージが頭のなかで漠然としていて、作っている最中にだんだん変化していった、という経験はありますか? ときには、モデルを読み込んだりテクスチャや大気を設定した瞬間に方向性が変わった、あるいは、まったく新しいひらめきが起こった、なんてこともあるでしょう。 Tony Martin 氏の場合はどうだったのでしょうか?最初の発想からこの魅惑的な作品の完成に至るまでの心象風景を語っていただきましょう。

 

メイキング・オブ "Summoning"(召喚) by Tony Martin

Cornucopia 3D をご覧の方から、あるとき、この作品はどういうコンセプトで作ったのですか、という質問を受けました。 私の最初の心象風景は、山の頂上で別人格を呼び出す一人の女性、というものでした。 私の作品づくりの過程には、いつも新しい発見があります。そこでアイデアが変わっていくのも、創作という航海の一部なのです。 下のスクリーンショットは、このシーンを Vue で見たところです。

地形について

このシーンには 3 種類の地形を使っています。 手前の 2 つが直接生成地形で、いちばん遠いのが標準地形です。 奥の 2 つは、標準的な山脈をそのまま使っています。 カメラにもっとも近い地形は、この作品の主役(「ジェイド」と呼ぶことにしましょう)が座る丘で、作成後に縮小してあります。 さらに、左側が斜面になって頂上が平地になるように編集しました。 テクスチャにはQuadspinner Mineral Infinity コレクションの Monochromite 質感を選びました。 奥の 2 つには、Vue 標準の [岩と草地] 質感をあてています。 下のスクリーンショットは、地形の配置を示したものです。

植生について

手前の台地のグランドカバーには、Martin Frost の Grasslands バンドルに収録されている European Beach Grass から 3 種類の亜種を作成して配置しました。 彩りと多様性を加えるために、標準の [レッドフラワー] も少し混ぜています。 ひとつの EcoSystem にこれらを設定したあと、平地の部分にペイントしました。 また、LaurentR の Sculpted Rocks 2 コレクションにある岩と小石も配置しました。 EcoSystem の設定は、下のスクリーンショットを参考にしてください。

樹木について

画面右側の大木は、Late Spring Alder のインスタンスです。 主役の頭の上まで張り出している木が欲しいと思っていました。球体の放つ光で木の枝や葉が下から照らされるイメージがあったのです。

木を大写しにするこの手のシーンで、木に一切の変更を加えずにそのまま使うと、木の皮を巻きつけたパイプクリーナーのように、まるでウソっぽく見えてしまいます。 遠景に使う木ならばそれで問題ないのですが、クローズアップの場合はディテールレベルを上げなければなりません。 というわけで、木を編集します。 植生エディタで [x2] ボタンをクリックして、木のポリゴン数を増やします。 このシーンの場合は、少なくとも 100万ポリゴンを目安にして、これを繰り返しました。 途中で、葉と花弁のサブセットで [長さ] を +22、[乱数度] を +15、[しなやかさ] を +37、[カール] を +22 に増やしました。こうすると、葉の部分がただの板ポリゴンには見えなくなります。 植生エディタの設定は、下のスクリーンショットを参考にしてください。

レディ・ジェイドについて

メインキャラクターは Poser 2010 Pro で作成しましたが、7.0 以上であれば問題ないと思います。 Poser で位置決めをし、衣装を着せてポーズをつけたあと、保存して Vue に読み込んでいます。 Vue は Poser フィギュアをそのまま読み込めますから、シーンにキャラクターを追加するのはとても簡単です。読み込んだあとは、シーンの大きさに合わせて拡大縮小し、張り出した枝の下に座らせました。

大気について

まず New Latitudes 1 コレクションの Thunder Comes 2 を読み込んで、そこからイメージに沿って調整していきました。太陽の位置は、左奥の山頂のすぐ上に動かしました。 また、地表を這う濃い霧を表すために、下のほうに雲レイヤーが欲しいと思いました。 そこで、大気エディタで雲タイプ [濃密な積雲レイヤー] の雲レイヤーを作成しました。 地表を這わせるために、[高度] は 0 にして、[雲の高さ] はシーンのスケールに合わせて 20m にしました。 その他の設定は、次のとおりです。 [雲の量] = 76%、[密度] = 50%、[不透明度] = 50%、[鮮明度] = 45%、[羽] = 30%、[細かさ] = 41%、[高度変化] = 100%、[グローバル照度] = 30%、[影の密度] = 61%。

光る球体について

標準の球体オブジェクトを作成したあと、シーンのスケールに合わせてサイズ調整し、ジェイドの手のひらの上に配置して、浮かんでいる様子を出しました。 次に、ガラスコレクションの [泡2] の質感を適用しました。 球体のなかのフィギュアは Poser で用意し、Vue に読み込んで、球体におさまるように縮小しました。 光は点光源です。球体の内部に配置しています。 置き場所ですが、フィギュアを逆光にしたかったので、フィギュアの向こう側で、球体のできるだけ中心に置きました。 この点光源で、張り出した木の枝や葉が下から照らされ、ジェイドの顔にも柔らかい光があたって、シーンに独特の雰囲気が生まれました。 点光源の設定は、[カラー] が白、[強度] が 25 で、[柔らかさ] が10 です。 下のスクリーンショットは、シーンに点光源を配置したところです。

最後に

このシーンは、基本構成は一日でできましたが、その後だいたい一週間くらいは毎晩、とにかくいろんなところをいじって、最終的にはほとんど丸ごと変更しました。 最終レンダリングの画質オプションは [スペリオール] で、シングルコア i7 マシンでおよそ 18 時間かかりました。レンダリング時間の大半は、大気と低地の雲レイヤーの計算です。 Vue で作業するときはいつもそうですが、今回も、シーンがどんどん進化していくのを感じながら、とても楽しく作品を仕上げることができました。

どうもありがとう! Tony Martin