この「メイキング・オブ」は、毎週お一人の Vue コミュニティメンバーにスポットライトを当てるページです。 世界中でたくさんの人々が、Vue の製品ラインを使って素晴らしい作品を紡ぎ出しています。そんな皆さんに作品の作り方を解説してもらい、ノウハウを共有できれば、というのが、このページの狙いです。

水の表現は難しいものです。旧来の紙のメディアの場合もデジタルメディアの場合も、自分の目が捉えた水面の色の複雑なグラデーションを作品にどう反映させるかは、アーティストが苦心するところです。 そんな悩みも、Vue を使えば一発で解決です。今週のゲスト Marty Dix 氏は、その秘策を惜しみなく披露してくれました。

 

メイキング・オブ "Waves on a Beach"(砂浜に打ち寄せる波) by Marty Dix

この作品のアイデアは、『Landscapes and Pastoral Scenes(景観/田園風景)』という課題に取り組んだときに思いついたものです。荘厳な雰囲気のなかに現代世界のテイストが読み取れるシーンにしたいと思いました。 結果的には荘厳というより親近感のある作品になってしまったのですが、最初の構想は、そうでした。 漠然とイメージしていたのは、タイのライレイビーチです。

人けのない砂浜をペットを連れて歩く女性というストーリー仕立てにはなっていますが、私がもっともアピールしたいのは水の質感の出来栄えです。 このように、写真と見間違えるほどリアルな海水の色のグラデーションも、Vue を使えば簡単に作ることができます。

まずはじめに、Vue 8 Infinite で地面を作成します。 512 x 512 の標準地形です。地形エディタで全体を持ち上げて、高い高度で平らにします。 次に、真ん中を削って大きな海盆を作り、水面から離れたところに緩やかな隆起を作ります。

海は、無限平面の水面オブジェクトです。メタウォーター質感 [波立つ海岸] を適用して、色を変えています。 水の質感の [バンプ] タブで [ディスプレイスメントマッピング] を有効にし、[水面設定] パネルを下の図のように設定します。波の動きの要素を下げて風の強さと岸辺の泡の量を上げると、長い距離を伝わってきた波が海岸線に到達して砕ける様子をリアルに再現することができます。 水面設定を変更する前に、必ず質感を設定しておいてください。水面設定と質感はリンクしているので、水面に変更を加えるとそれに応じて質感も影響を受けてしまうからです。

次に行ったのは、砂浜の質感設定です。最終的には複雑な合成質感になるのですが、まずはプリセットの [濡れた砂浜] を割り当てます。 質感タイプを [EcoSystem] に変更して、Incredibly Lush の Palm Trees と Ligustrum Japonicum を追加します(スクリーンショットでは、わかりやすくするために名称を変更しています)。

- [濡れた砂浜] の Wet sand color レイヤーの [全体色] を、少し明るめの砂色に変えます。
- 乾いた砂(Sand レイヤー)のバンプを [3ノイズフラクタル] に変更して、柔らかい砂浜に残る足跡を再現します([バンプ] タブのプレビューを右クリックして関数エディタを開き、グラフの中で右クリックしてフラクタルノードを追加。 ノードのドロップダウンに [3ノイズフラクタル] と表示されます)。 その後、質感エディタの [バンプ] タブの [ディスプレイスメントマッピング] を有効にすることも忘れずに。 
- [ディスプレイス表面へバンプマップ追加] も有効にします。 これを有効にすると、ディスプレイスメントに [3ノードフラクタル] が使われるようになり、標準の高速レンダリング設定とディスプレイスメント設定では表現できないディテールが加わります。

思いどおりの砂浜が作れたら、水面オブジェクトを上下に動かして、海岸線を基準に高さを調節してください(細かい部分はレンダリングしてみないとわからないので、ある程度は勘が頼りの作業です)。

最後に、EcoSystem を配置します。

ビーチの構成は以上です。 このあと、大気、雲、照明(グローバルラジオシティ)など、水面の色や質感に大きく影響する環境の設定を行うのですが、細かい説明は次の機会にしたいと思います。 参考までに大気エディタで追加した [平たい積雲] ([スペクトラル2] の下)雲レイヤーの設定を、下に示します。

実は、このシーンは最初明け方の日の出の時間帯を想定して作り始めたのですが、あまりに見栄えが悪いのでやめました。 朝焼けのオレンジ色を受けた砂浜が紫がかった色になり、海のアクアマリンの色調と合わなくなってしまったのです。 カラーパレットで色を何度も選び直したり太陽を真上に動かしたりしているうちに砂の色みがほとんど消えて、海水の緑や青とよくマッチするようになりました。 シーンの雰囲気は、照明でがらりと変わるものですね。

駆け足でしたが、以上でシーンの基本部分の説明を終わります。 このチュートリアルのどこかほんの一部分でも、みなさんの創作活動のヒントになれば、幸いです。 ありがとう! MartyD.