この「メイキング・オブ」は、毎週お一人の Vue コミュニティメンバーにスポットライトを当てるページです。 世界中でたくさんの人々が、Vue の製品ラインを使って素晴らしい作品を紡ぎ出しています。そんな皆さんに作品の作り方を解説してもらい、ノウハウを共有できれば、というのが、このページの狙いです。

インスピレーションの種は、いろいろなところに転がっています。 今週のゲスト Robert Blanda 氏にインスピレーションを与えるのは、静物画やフェルメールの世界。ほんのりとした照明に注意を払うことで、作品にドラマ性と空気感が加わり、古典的な名画に新しい解釈を見いだすことができると、氏は言います。

 

メイキング・オブ "Morning"(朝) by Robert Blanda

私はかねてから、Vue や Poser といった CG プログラムで、古典派の巨匠の絵画、とりわけ、静物画や室内画をモチーフに作品をつくってみたいと思っていました。 3D モデリングは経験が浅く、いまだに商用のモデルに頼ることもしばしば。そんな私の作品のイメージにピッタリなインテリアが収録されている Don Webster 氏の Tall Studio には、本当に救われました。 これは、奥行きのある部屋に、大きな窓から光が差し込んでいるというモデルです。 建物の屋内を表現するとき、私はいつも、太陽が燦々と輝く外と暗い部屋というように、光と影の強いコントラストをつくることに努めています。 今回選んだ建物のモデルは、この意図を十分に反映するものでした。

言うまでもなく、この作品の出来を左右するのはライティングです。私は最初から、そのことを意識して作業を進めました。 建物のモデルを読み込んだとき、部屋の外にボリュメトリックの二次減衰スポット光源がひとつ用意されていることに気づいて、 とても嬉しい気持ちになりました。自分で用意する手間が省けたからとか、そんな理由ではありません。このモデルの作者が、この建物にはこのライティングと、私と同じ感覚を持っていることが嬉しかったのです。光源の設定をもっと過激にして、室内の暗さとの対比を強く打ち出せば、古典絵画の明暗法を表現できます。 私は、このスポット光源の [強度] と [カラー] を調整しながら、光源そのものも、建物入口の菱形のガラス窓を直射する位置に変えたほうがいいと考えました。 窓枠に遮られたボリュメトリック光源から光の帯が四方に広がるようになったら、主要な設定はほぼ完成です。

メインの光源はできましたが(大気設定はまだデフォルトのままです)、このままでは室内が暗すぎると感じました。 家具や小道具を配置するつもりだったので、それらがうっすらと見える程度の明るさが必要でした。 そこで、天井灯を建物の入口側に動かして、ロウソクの天辺に、灯りとなる点光源を配置しました。 この点光源の [強度] は、部屋のなかがかろうじて見える程度に落としました。 これで、室内の光量は思っていたとおりになりました。

家具は大幅に入れ替えました。もともと部屋に含まれていた家具のうち、そのまま使ったのはイーゼルと飾り戸棚ぐらいです。 それ以外は、同じく Don Webster 氏の Brugge(ブルッヘ)シリーズ に収録されている家具と、Poser 付属の小道具を配置しました。 私はフェルメールの作品でよく見かける重厚な壁掛けタペストリーが好きなので、それらしきものを作ろうと思い立ち、Don Webster 氏の Brugge Cloth から大判のクロスを選択して、部屋の右側に配置しました。 壁の高さ方向に合わせて、かなり極端なリサイズをしました。 右側の壁には、ほかに壁掛けの絵も欲しいと思っていました。格子状の影を受けてもなお、何が描かれているのかハッキリとわかる絵です。 これには、非常に明快な海軍のモチーフを選びました。 反対側の壁には肖像画を掛けました。肖像画は、無人のシーンを活気づけるのに効果的なのです。

前景には、反射属性の高いアイテムを置こうと思っていました。室内の環境光をほどよく捉えてくれますし、シーンに少しだけメリハリが生まれるからです。 そこで、ガラスのボトルと、Luke Ahearn 氏の Pirate Captain Galley(Poser 小道具集)に入っていた、金のゴブレットを置きました。 金の質感を、反射と屈折の高い厚手のガラスの質感に変えると、周囲の家具や小道具よりも光と色が際立って、よいアクセントになりました。同じ効果を狙って、階段の壁に鏡を掛け、天井灯から球体をぶら下げました。
このあと、テストレンダーの段階で、室内の小道具や窓辺の女性(後述)の反射をさらに調整しましたが、その設定の一部は、残念ながら強いボリュメトリック光源にかき消されてしまいました。

外の光景については、当時の都会的な雰囲気を表すものが欲しいなと考えていました。たとえば、ちょっと小難しい建築物などです。窓の格子越しに、ディテールがわからない程度に見える、というイメージでした。 使用したのは、同じ作者の Brugge Post です。 複雑な形のとても見事な建物で、私のイメージにピッタリでした。 ほかにも樹木や石畳などを配置してみましたが、ボリュメトリック光源が強いため、おかしなカンジになってしまいました。 路面のような暗い色のテクスチャを外に配置すると、光の様子が変わってしまうのです。

この作品に着手した当初から、私の頭のなかには、シーンを生き生きとさせるためには人物を加えたほうがいい、という考えがありました。 そこで、当時の衣装に身を包んだ女性を窓辺に立たせようと思いました。ちょうど、ボリュメトリック光源の光の筋ができる場所です。 あいにく、使えそうな .vob オブジェクトを持っていなかったので、Poser で作成して Vue に読み込む作業が必要でした。 これが意外に大変でした。当時の衣装として適切なものが見つからなかったのです。 結局、DAZ 3D の Lovers of Darkness and Light - Dark Juliet という商品が手ごろだったので、これを買って Victoria 3 に着せることにしました。 衣装の一部分は私の好みではありませんでしたが、女性はシルエットで見えればいいと考えていましたから、さほど気になりませんでした。 ポーズを何パターンか試したあと、最終イメージのポーズに辿り着きました。

最終レンダリングの設定で意識したのは、右側の壁に当たる光を極力滑らかにして、それでも影の格子の形はしっかりと出るように、ということです。 残念なことに、私のロースペックの PC では最高画質は選べなかったのですが、[ブロードキャスト] 設定でも要求はすべて満たされました。 今後、このシーンを改良するときには、当時のスタイルをもっと反映する人物と衣装を探してみたいな、と思っています。 

Anyway here it is! Thanks!  Robert Blanda