この「メイキング・オブ」は、毎週お一人の Vue コミュニティメンバーにスポットライトを当てるページです。世界中でたくさんの人々が、Vue の製品ラインを使って素晴らしい作品を紡ぎ出しています。そんな皆さんに作品の作り方を解説してもらい、ノウハウを共有できれば、というのが、このページの狙いです。

キャラクターを主役に据えて印象深いレンダリング画像を作ろうと思っても、アイデアが浮かばずに苦戦することがあります。 今回のゲストは Mike Thayer 氏です。「3D Character Rendering Challenge 2010」の受賞作品、「Dryad Dance(ドリュアス・ダンス)」からは、Thayer 氏の高い芸術性と技能が窺い知れます。見ているこちらも引き込まれて踊ってみたくなるような、想像力と斬新さにあふれたこの作品は、どのようにして生まれたのでしょうか?

 

メイキング・オブ "Dryad Dance" by Mike Thayer

必要なソフトウェア:

  • Poser 6 や Daz3D など、人体フィギュアのモデリングができるプログラム
  • レイヤー構造をサポートする画像編集ソフト(Photoshopなど)
  • Ivy Generator 1.3 (アイビーをランダムに生成するフリーウェア)
  • Vue 6 またはそれ以降

このチュートリアルは Mac OSX 版の Poser 6、Vue 6 Infinite および Photoshop Elements 6 を使った作業手順を示したものですが、Windows 版でも同じことができるはずです。 とはいえ、私は Windows 用のソフトは使っていないので、ここでお見せするものとまったく同じ結果になるかどうかはお約束できません。あらかじめご了承ください。

手に馴染んだモデリングツール(図は Poser 6) で、ついに非の打ちどころのないフィギュアができた!ポージングも完璧!となれば、葉っぱの衣装を纏わせたくなりますよね? まあまあ、最後までお付き合いください。


Poser を終了する前に、やっておくべきことが2つあります。 ひとつは、フィギュアを OBJ ファイルとして書き出すこと。 Ivy Generator はネイティブの Poser ファイルに対応していないので、OBJ で出力して、Ivy Generator が読める形の「マネキン」を作る必要があるのです。

ここではシングルフレームしか使わないので、範囲の書き出し設定はデフォルトのままで OK です。 [Hierarchy Selection(階層の選択)] ダイアログで、フィギュア以外は必要ないので、いったん [Universe(ユニバース)] を選択解除したあと、出力対象のフィギュアを選びなおします。

ここで、選択したフィギュアに他のモデル(髪の毛や小道具など)を割り当てたり埋め込んだりしていないか、確認してください。あまりに複雑なファイルは、Ivy Generator でうまく開けない場合があります。 次の画面で、ファイル名と保存先を決めます。私からのアドバイスは、このプロジェクト専用の新規フォルダを作ること。その他のいろいろなファイルであっという間にいっぱいになるので、フォルダは分けておいたほうが効率的ですよ。

次の OBJ 設定ダイアログでは、私は次のように設定しました。 ひとつひとつの意味はよく判っていないのですが、Poser でコンフォーム服をダイナミッククロスに変換するときにこの方法でうまくいっているので、これで大丈夫だと思います。 それぞれの設定項目について詳しく知りたいという方は、Poser のマニュアルをお読みください。 Poser 以外のフィギュア作成ツールをお使いの場合は、付属のマニュアルを参照してください。 必要なのは、OBJ 形式で出力したフィギュアです。

OK をクリックして、ファイルを保存してください。 これで、OBJ 形式の Poser フィギュアができているはずです。

もうひとつ、Poser でやっておくべきことが残っています。 地味ですが大切なひと手間です。Poser ファイルを Vue で扱うときに、これをやっておいたおかげで、どれだけストレスを回避できたことか。 後の工程で、画像編集ソフトを使ってテクスチャファイルに手を加えるのですが、そのときにも、もとのテクスチャではなく複製を加工していきますから、これが役に立つのです。

ひと手間というのは、Poser Python スクリプトを実行することです。 Mac 版の Poser 6 の場合は [File(ファイル)] > [Run Python Script(Python スクリプトの実行)] を選択してください。このメニューコマンドは、6 以外のバージョンでも、だいたい同じ場所にあると思います。

次のダイアログボックスで、無名ながらも存在感がキラリと光る Poser スクリプト、Collect Scene Inventory を探してください。 Mac 版の場合のファイルパスは Poser: Runtime: Python: Poserscripts: Utility: Collectsceneinventory.py です。 Windows 版の場合も、似たようなファイル構造になっていると思います。 これは、Poser シーンで使われているすべてのテクスチャと関連ファイルを一箇所に集めてくれるという Python スクリプトです。 このスクリプトの存在を知ってからというもの、Poser から取り込んだオブジェクトを Vue でレンダリングするときは、欠かさず使っています。

スクリプトは最初に、List the Files(ファイルの一覧を作る)か Copy all to Folder (指定のフォルダにコピーする)かを尋ねてきます。 Copy all to Folder (指定のフォルダにコピーする)を選択してください。

次に、ファイルのコピー先を指定する画面が現れますので、先ほど作ったプロジェクト専用フォルダを選択してください。 (「いろいろなファイルでいっぱいになる」と書いたのは、これのことです) このスクリプトは新規 Poser ファイルも作成しますので、ここで名前をつけてください。

それではスクリプトを実行しましょう。 少し時間がかかるかもしれません。のんびりお待ちください。

注意:スクリプトを実行しても、シーンに使われている OBJ ファイルやテクスチャファイル(髪の毛のモデルなど)が検出されない場合があります。そのときは、ファイルを手動で作業フォルダにコピーする必要があります。


さあ、これで Poser での作業は終わりです。次のステップへ進みましょう!

Ivy Generator は、アイビーを生成するフリーウェアです。驚愕するほど見事な結果が得られますが、2008 年以降はプログラムが更新されていません。Ivy Generator の Web サイトでレンダリングサンプルが豊富に紹介されていますので、参考にしてください。 実はこのツール、お世辞にもユーザーフレンドリーとは言えず、アンドゥ操作もできないので、かなりの試行錯誤が必要です。 その点はイライラさせられますが、かけた時間と労力に見合うだけの結果は十分に得られます。
ここでは Ivy Generator の使い方についての説明ではなく、私の経験談として、うまくいった方法をお教えします。

まず Ivy Generator を起動します。 何もない画面と、よくわからないラベルのついたボタンが表示されます。 [import obj+mtl] ボタンをクリックして、先ほどPoser から書き出した OBJ のマネキンを読み込んでください。 カメラを動かさないと、マネキンが画面に現れない場合があります。 Poser のフィギュアを他の 3D ツールで開くとき、縮尺の違いが問題になることがありますが、このツールも例外ではありません。 読み込んだマネキンは、おそらく、超巨大だと思います。 Ivy Generator では、読み込んだマネキンの縮尺変更はできません。そこで、アイビーのほうの縮尺調整が必要になります。

Ivy Generator はアイビーを OBJ オブジェクトの表面から外側に向けて生やすというツールですが、今回やりたいのは、これではありません。 今回は、アイビーをマネキンの内側に生やしたいのです。オブジェクトの表面を「バリア」にして、アイビーが伸び散らかっていかないようにしたいのです。 こうすれば、モデルのシルエットが崩れません。 そのために、[flip normals] ボタンをクリックしましょう。

次に、[Growing] タブをクリックしてください。 このタブには、アイビーの大きさと伸び方を決めるさまざまなパラメータがあります。 読み込まれたマネキンが巨大だったので、それに合わせて [Ivy Size] も思いっきり大きくしなければなりません。

マネキンの足元を拡大表示して、フィギュアの内側にあるポイントを慎重にダブルクリックしてください。 これがシードポイント、すなわち、アイビーが生える基点です。 パラメータの設定は下の図が参考になると思いますが、何をどうしたらどうなるか、思う存分試してみてください。 各パラメータの解説は、ここではしません。その仕事は、インターネットにあふれている Ivy Generator のチュートリアルに委ねることにしましょう。

アイビーの育て方には、いくつかコツがあります。

  1. 何株もたくさん作って育てること。
  2. 毎回、新しい種を蒔きなおす必要があります。
  3. 完全に伸びきる前であれば、 [grow] ボタンを押したあとにもう一度 [grow] ボタンを押すと、そこで生長を止めることができます。 ここで私からのおススメ。生長の過程で [grow] ボタンをこまめに押して、そのときどきでアイビーを書き出しておくとよいでしょう。 書き出したあと、もう一度 [grow] ボタンを押せば、そこからまた生長が始まります。
  4. 育てた株は、とにかく保存しておくこと。

[grow] ボタンをクリックしたあとのアイビーの伸び方は、プログラムが決定します。 私の場合、この形に育つまで優に10回以上はやり直して、どうにかこうにか形になったので、ここでやめました。 アイビーは、いつまでも放っておくとシーン全体にはびこっていきます。 このツールはアンドゥができないので、伸び加減をひとつ前に戻す、なんてことはできません。なんとなくいい形ができたと思ったら、そのつど書き出しておくことが重要です。 ときには、アイビーがバリア(オブジェクト表面)を突き抜けてしまうこともあります。 それが思わずよい結果につながることもあれば、そうでないこともあります。

次に [Birth] タブをクリックしてください。このタブでアイビーを実際に生成します。 ここでも図のパラメータが参考になると思いますが、満足のゆく結果になるまで設定を変えて試してみてください。 [birth] ボタンをクリックすると、アイビーが生成されます。 見落としがちなのですが、蔓ばかり伸びて葉がついていないという場合は、このタブの設定に問題があります。 スライダを使って設定を調整し、もう一度 [birth] ボタンをクリックしてください。

アイビーの形がイメージどおりになったら、[Scene] タブをクリックして [obj+mtl] 形式で書き出しましょう。 保存するときは、あとで見たとき内容がわかるように名前をつけること(例:Leftleg-01.obj など)。

書き出しが終わったら再度 [Growing] タブをクリックして、その蔓をそのまま伸ばすか、または新しい株を作ります。

運がよければ、1株だけでもマネキンを思いのままに包みこむことができますが、そんな幸運はまずありません。 私の場合、いくつか育てたうちの1株がイイカンジにマネキンを包み込んだまではよかったのですが、葉が肩を突き抜けてしまい、武装したようないかつい姿になってしまいました。 後加工をしてはならない、というのがコンテストの規則だったので、残念ながらボツにしました。 完成画像には7株のアイビーを使っています。マネキンの内側のシードポイントも、それぞれ変えました。 300 以上のアイビーを書き出して、最終的に使いものになったのが7株だった、というわけです。

作業にうんざりしたら、おっと失礼、作業が終わったら、Ivy Generator を終了して次のステップに進みましょう。

次は、Photoshop など、レイヤーが使える画像編集プログラムを使います。

Poser フィギュアに使われているテクスチャファイルを開いてください。 もとからあるテクスチャを加工して使う場合にいちばん簡単なのは、余分なところを消したレイヤーを複製し、そのレイヤーのコントラストを上げて白黒2値にして、必要な部分の透明マスクを作る、という方法です。これを Vue で適用すれば、見せたいところ以外はすべて透明になります。

さて、ここまで来て、先ほどの工程で作ったアイビーの分量が十分ではなかったために、スカスカで内側の肌がちょっと露出する、ということに気づいたのです。 そこで、アイビーの葉(Ivy Generator で使ったものと同じ葉)を肌のテクスチャのところどころに貼り付けて、露出を抑えることにしました。 もとのテクスチャ画像を土台にして、あとで面倒なことにならないように、テクスチャの継ぎ目の部分を避けてアイビーを配置しました。 奥行き感をつけるために、肌と似た色の葉も何種類か用意して、葉から肌へとテクスチャが変わる部分に配置しています。

手足の部分のアイビーは、指先のシルエットを覆ってしまわないように配置しました。 そのレイヤーを複製して白黒2値に変換し、コントラストを上げて明るさを下げ、手足用の透明マスクも作成しています。

Photoshopでテクスチャを保存するとき、私は通常 [Webおよびデバイス用に保存] メニューコマンドを使います。ファイル容量が軽くなり、Vue で開いたときも使用メモリが少なくて済むからです。 

この作業では最終的に、修正済みのテクスチャ画像、それと、ボディ用、手足用の透明マスクができます。

そこまでできたら、画像編集ソフトを終了します。

さあ、これで Vue に配置する素材の準備ができました!

Vue を起動してください。

まずは、Poser から書き出した、つまり、Ivy Generator に使ったマネキンを読み込みます。

重要:読み込んだマネキンは、動かしたりリサイズしたりしないでください。画面の表示状態を変えたいときは、カメラを動かしてマネキンに近づけてください。 

マネキンのテクスチャファイルについては、ここで考える必要はありません。マネキンはこの後の工程で削除するからです。

アイビーの OBJ ファイルを読み込んでください。 マネキンの位置や大きさを変えていなければ、読み込んだアイビーとマネキンの位置や大きさがピッタリ合うはずです。 ここからは、Ivy Generator で生成して書き出した複数のアイビーファイルを読み込んだり、削除したりしながら、完成イメージに近づける作業になります。 OBJ ファイルは、どれを読み込んでも、マネキンの位置や大きさとピッタリ合うはずです。 オブジェクトが増えて何がなんだかわからなくなってきたら、ワイヤーフレーム表示に切り替えましょう。

いい形ができたら、すべてのオブジェクト(アイビーとフィギュア)をグループ化します。
念のために、ここまでを一度保存しておきましょう。

さて次は、髪の毛や小道具を含むオリジナルの Poser シーンを(PZ3 で)読み込みます。読込み設定はお好みでどうぞ。 ただし、Poser シェーディングは使ってはダメですよ!

読み込んだ Poser フィギュアはマネキンとアイビーのグループよりずっと大きいのですが、このあと修正します。

Vue 6 の場合、Poser のネイティブファイルを読み込むと、フィギュアのハイライトがおかしくなることがあります。 Poser フィギュアの肌をよりリアルに見せるためのテクニックはいろいろありますが、お気に入りの方法があれば、この段階でやっておくことをお勧めします。
 
フィギュアの準備ができたら、マネキンとアイビーをすべて選択して、新しく読み込んだ Poser フィギュアに合うようにスケール調整します。 マネキンと実際のフィギュアができるだけピッタリと合うようにしてください。 完璧に、とまでは言いませんが、近いに越したことはありません。

読み込んだ Poser ファイルとマネキンの大きさを合わせたら、アイビーだけを残してマネキンは削除します。 どうしてマネキンをそのまま使わないのかと思われるかもしれません。たしかに、それでも問題はないと思いますが、私は Vue で作業するときは Poser フィギュアを扱うのに慣れていますし、そのほうが質感の編集がしやすいと感じているので、そうしています。

さて、この時点で、Poser シーンのフィギュアを、アイビーが包む込む状態になっていると思います。

ここからは、質感の調整に入ります。 テクスチャファイルの差し替えでいちばん簡単なのは、[ワールドブラウザ] の [リンク] タブを使う方法です。 ここには、シーンで使われている、Vue のネイティブ以外のテクスチャとオブジェクトがすべて表示されます。 スクロールして、オリジナルのテクスチャ画像を探してください。 見つけたら右クリックして、[リンクの入れ替え] を選択し、先ほど加工した肌とアイビーのテクスチャを選択します。 変更を加えたテクスチャは、すべてこの方法で差し替えてください。 終わったら保存しましょう。

次に、フィギュアを部分的に透明にしていきます。 この作業は、基本質感エディタで簡単にできます。 [透過マップ] に先ほどの透明マップを追加すれば、ほらできあがり! 部分的に透明なフィギュアの完成です。 手足も同じように設定してください。

葉と肌のテクスチャをもっとリアルに見せるためのテクニックは他にもありますが、それを説明すると長くなってしまいますので、今回は、外部のツールと Vue の合わせ技をご紹介しました。

大気の設定は、難しいことは何もしていません。

シーンのライティングは、これまでのステップに比べると、ずっと簡単です。 フィギュアの前に点光源を2つ配置して、強度を20、カラーを濃いグレーにして、影の濃さを100%にします。 もうひとつ、スポット光源を作成して真上に配置し、ボリュメトリック光源にして薄暗い森の中の雰囲気が出るようにしました。こちらの光源は、強度を60前後にしています。

納得できる結果になるまで、じっくりと調整してみてください。 光源の設定が終わり、その結果にホクホクしていたとき、はたと、フィギュアが宙に浮いていることに気づきました。 そこで、シンプルな岩石をひとつ作ってオブジェクトとして書き出し、Ivy Generator に読み込んでアイビーを適当に茂らせました。その後の Vue への読み込み方法は、上に書いたとおりです。注意:Vue から書き出したオブジェクトを Ivy Generator に読み込むと、地平面よりも下に配置されてしまいます。理由はわからないのですが、使用上の問題はまったくありません。

レンダリング画質オプションは [ユーザー設定] をクリックして、下の図のように設定しました。

こうしてレンダリングした完成画像を、コンテストに提出したというわけです。規則に従い、後加工は一切しませんでした。

もっと簡単な作業手順もあるのでしょうが、私の場合はこのやり方でうまくいきましたので、試してみてください。楽しんでくださいね!  Mike Thayer

Thayer 氏 の作品は「2010 3D Character Rendering Challenge」で、見事、準優勝に輝きました。コンテストの受賞作品はこちら 、最終選考作品は こちら から閲覧できます。