CroatianDream

     

この「メイキング・オブ」は、毎週お一人の Vue コミュニティメンバーにスポットライトを当てるページです。 世界中でたくさんの人々が、Vue の製品ラインを使って素晴らしい作品を紡ぎ出しています。そんな皆さんに作品の作り方を解説してもらい、ノウハウを共有できれば、というのが、このページの狙いです。

私たちはこれまで、Vue で作られた驚くほど美しいポートレイトや見事な自然風景、建築ビジュアライゼーション、サイエンス・フィクションなどのシーンを紹介してきましたが、今回は、実在する地形をもとに、膨大な量の精緻な要素で都市をシミュレーションした作品です。制作したのは Matej Hosak 氏とプロジェクトチームの皆さん。 制作過程で必要だったものは、高度なテクニックではなく、根気強さと細部への気配りだったことがわかります。 これは面白いチュートリアルですよ!

 

メイキング・オブ "Croatian Dream" by Matej Hosak

この画像は、Vyonyx studio から委託されたプロジェクトの一部分です。 大規模な都市計画プロジェクトで、静止画が数点とアニメーションが1本という仕事でした。 クライアントの希望は、クロアチア特有の土地柄や雰囲気(いわゆる『ゲニウス・ロキ』)を忠実に再現してほしいというものでしたので、このショットには、参照として航空写真を使用しました。

モデリングにおいては、すべての要素に一定レベルのディテールが必要でした。 プロジェクトの焦点は、新興の中核都市と、それを取り囲む衛星都市です。 モデリングツールは主に Lightwave で、必要に応じて Rhino も使用しました。

シングル CPU の i7 マシンという制作環境でしたので、セグメントに分けた複数の地形をひとまとめにする段階で苦労しました。 クライアントから支給された高解像度の地形データには衛星画像が含まれており、それもセグメントに分割する必要がありました。 最終的には、地形を 10 セグメントに分けました。ひとつあたり、約 100 万ポリゴンです。テクスチャは、カメラからの距離に応じて 3,000 x 3,000 ~ 10,000 x 10,000 の範囲で用意しました。

水深のグラデーションが見えるようなリアルな海を作るには、海底のモデリングも欠かせません。根気のいる作業ですが、アニメーションを作る場合にはとくに、やっただけの効果が十分に得られます。

地形と建造物のモデリングが終わったら、いよいよ、楽しい緑地づくりです! 私たちは、次のような方法で緑地を配置しました。 

1. もっとも簡便なのは、言うまでもなく密度マップです。カラーチャンネルに使った衛星画像を Photoshop でモノクロに変換すると、黒いところが樹木のないエリア、白いところが樹木のエリアになります。

2. 特定の植生を配置したい部分は、専用のジオメトリを作成しました。地勢をコピーするように地形に投影し、[レンダリングしない] をオンにするか、または地形の数センチ下に動かして隠します。 この方法は、カメラから遠い森林や葡萄園、オリーブ畑などに使えます。

3. カメラから近いところ、主に都市部ですが、樹木を 1 本単位で動かす必要があるところは、ジオメトリを個別に作成しました。

4. 植生を均一に散布させたいところには、もちろん、標準の EcoSystem を使用しました。

細部の作りこみが終わり、オブジェクトと植生を思いどおりに配置できたら、最後の難関 - レンダリングが待っていました。クライアントの要求は、なんと、配置した人型フィギュアが見えるほど高解像度で、という、とんでもないものだったのです。 そこで私たちは、12,000 x 8,160 ピクセルでのレンダリングを提案しました。 これほどの解像度となると、当然レンダリング時間がネックになります。グローバルラジオシティを使いたかったので、事前に 5,000 ピクセルでプレパス処理をテストしました。このレンダリングは 2 時間ほどで終わりました。その後、フルレンダーを実行したのですが(残念ながら [植生の間接照明を無視] をオンにしました)、シングル CPU(i7 920)マシンで 30 時間かかりました。

また、柔軟性を確保するために、オブジェクト ID、質感 ID、間接照明、影、拡散反射、光沢などの要素をマルチパスでレンダリングしたので、Photoshop で個々のチャンネルを細かく調整することができました。 下の図は最終レンダリング画像です。TIFF 形式で 750 MB になりました。

そして下の図が、画像処理を施した最終的な合成画像です。

以上です。みなさんの制作作業のお役に立てば幸いです。


Cheers, Matej