この「メイキング・オブ」は、毎週お一人の Vue コミュニティメンバーにスポットライトを当てるページです。 世界中でたくさんの人々が、Vue の製品ラインを使って素晴らしい作品を紡ぎ出しています。そんな皆さんに作品の作り方を解説してもらい、ノウハウを共有できれば、というのが、このページの狙いです。

Vue は、Poser や DAZ Studio で作成したキャラクターの背景や周囲の風景づくりにも、よく利用されています。 ファンタジー、SF、歴史の名場面、あるいは日常のワンシーン。風景を与えられたキャラクターは、いきいきと物語を語りはじめます。 今回ご紹介するのは、女性作家の Leoni Venter 氏。獰猛なホワイトタイガーをどうやって手なずけたのか、聞いてみました。

 

メイキング・オブ・"Fluffy and Me"(フラッフィーと私) by Leoni Venter

「フラッフィーと私」は、Vue 9 Complete でレンダリングした3つめの作品です。Vue 9 はとても安定していて、Vue 8 ではうまくいかなかったことでも簡単にできるようになったので、使うたびに感動しています。制作環境は Core2 Quad PC、メモリは 8GB、OS は Windows Vista 64 ビットで、Geforce GTX 470 ディスプレイアダプタを使用しています。 このセットアップは、Vue 8 では必ずクラッシュしていたのですが、Vue 9 ではこれまでのところ一度もクラッシュしていません。グッジョブ、E-on!

この作品の「少女戦士とホワイトタイガー」という構想は前からあたためていたもので、今回やっと、イメージを形にすることができました。

まずは Poser で 2 体のフィギュアを用意し、衣装、ポージング、テクスチャを設定しました。 マシンへの負荷をできるだけ減らすために、ファイルは細かく分けて作業しました。V4 とそれに付随するモーフは言うまでもありませんが、少女戦士の衣装も相当なポリゴン数だったからです。

次に Vue で、新しいロッキーマウンテン・フラクタルを初めて使ってみました。

実はいまだに関数エディタがよく分からないのですが、そんな私でも、このフラクタルは簡単に使えました。 直接生成地形を作成し、地形エディタを開いて [直接生成] タブをクリックし、プレビューを右クリックして [関数を編集] を選択します。関数エディタが開いたら、デフォルトの簡易フラクタルノードを [ロッキーマウンテン] に変更します。 スライダーをいくつか適当に動かしていたら、なんとなくイイカンジになりました。それだけ。 これで雪山のできあがりです。 ロッキーマウンテンノードってステキ! Vue でこんなに簡単に、満足できる見栄えの山を作れたのは初めてです。 (たぶん、今まではやり方がうまくなかったんでしょうね)

大部分が平坦でところどころに切り立った山頂があるという、イメージどおりの地形です。 次に、雪山をよく知らない私の目にもリアルに見えるような質感を探しました。 (私の住んでいるところは雪が降らないので、雪景色についてはまったくのシロウトなのです)

そして、IcehouseDesigns と Martin J Frost が製作した「Distant Mountains For Vue 7 and Up」(RuntimeDNA で購入)というセットの Ramtop Mountains という質感を使うことにしました。デフォルトの状態が好きなので、設定は何ひとつ変えていません。 これはマルチレイヤー質感で、私はたびたび使っています。

次に、前景づくりにとりかかりました。実はいちばん手こずった部分です。 地形を作って平坦化したあと、Poser で作った 2 体のフィギュアを読み込みました。 フィギュアの大きさと地形の大きさがどうしても合わないので、心のなかでさんざん悪態をついたあげく、地形の縮尺設定が間違っているのだという結論に達しました。そこで地形を削除し、代わりに巨大な球体を平たくつぶしたものを使うことにしました。 いま思えば、地形との格闘は余計な回り道でした。というのも、その平たくつぶした球体は、偶然にも地形の前に作ったメタブロブの一部で、あとから使うかもしれないと保存しておいたものだったからです。 それ以外のメタブロブパーツはレンダリングに映らないので、すべて削除して、フィギュアの足がほんの少しだけめり込むように、球体の位置を調整しました。

位置合わせのあとの質感設定は簡単でした。使ったのは、Vue 付属の [冬のグランドカバー](TerrainScapes)です。 こちらも、読み込んだだけで、設定はいじっていません。

中景の凍った湖(水面)の部分は、 海面に Gill Brooks' Water Materials Pack 1 の Icy Patches を適用しています。

大気については、頭のなかのイメージに合わせて設定を調整しました。 調整といっても簡単なもので、 プリセット大気の [早春] を読み込んで、ほんの少しいじった程度です。 照明モデルはデフォルトの [グローバルアンビエンス] のままにしました。見た目も十分で、レンダリング時間もそれほどかかりません。 ちょっとまぶしいくらいの雪のカンジにしたかったので、[グローバル照明調整] の [露出] の設定も変えていません。

雲については、デフォルトの雲レイヤーを削除して、[スペクトラル2] のプリセット質感 [ふわふわした積雲] を読み込みました。 青い空と白い山というコントラストを際立たせたかったので、[雲の量] と [細かさ] を調整して、ほぼ一面の青空にわずかな雲、という空を作りました。

[天空、霧ともや] タブで、減衰設定を調整してイメージに近づけました。また、[グローバル設定] の [空気遠近法] を10から15に上げました。[空気遠近法] は、景観をレンダリングするときに遠近感を強調できるので、とても便利です。 ただし、やり過ぎると大気の濁りが激しくなり、少なすぎると奥行きがなくなります。

太陽は右側に配置してフレームアウトさせました。キャラクターの影が、左側に長く伸びるようにしたかったからです。 そのせいで、少女戦士の顔の左半分が影で真っ黒になってしまいましたが、レンダリングに映らない場所から光源を当てれば、問題解決です。ここが CG の便利なところ。

無限遠光源を追加してシーンの左側に配置し、LightTune モジュールの機能を使って、この光源の影を無効にします。

さらに、[光源によるオブジェクトの影響] で、2 体のキャラクターだけを選択します。 地面をライトアップする必要はありませんからね。 (本物の照明でもこんなことができたらいいのに…)

太陽光の設定は、下の図のようにしました:


リアルに仕上げるために、[柔らかさ] を 0.50 にして影の輪郭を和らげています。 影の輪郭がくっきり出るのは、おそらく宇宙空間だけでしょう。 この程度のソフトシャドウであれば、レンダリング時間にはさほど影響しません。

[影の濃さ] も、少し弱めました。 ここに図示していない照明効果は、すべて無効にしています。 レンズフレアも無効です。太陽は見えない位置にありますからね。 このシーンの場合はボリュメトリック光源にしても意味がないので、それも無効にしました。

シャドウマップを使うとレンダリングが格段に速くなりますが、作りたいシーンの性格によっては、精度に満足できないことがあります。 今回もそうだったので、レイトレースシャドウを使いました。

最後に、 SkinVue 9 で少女戦士の肌の質感を変えました。そのままだと、ちょっと作りものっぽいカンジがしたのです。 ここでも、仕上がりに満足するまで設定をあれこれ調整しました。 デフォルトの設定だと肌がざらついて見える場合があるので、私はいつも、顔と体の Bump Value (バンプ値)を下げるようにしています。 少女戦士ですから、セクシーにならないよう、唇を暗めの色にして Specular Shine(光沢)を下げました。あとは、北欧系白人の肌質を残しつつも健康的な日焼け肌になるように、Tone(トーン)を調整しました。

最終的には 3840 x 2160 ピクセルでレンダリングを行いました。かかった時間は 12 時間半です。 レンダリング設定は下の図を参考にしてください:

レンダリング後、右端の山肌に恐竜の背骨の化石のような不自然な模様が出ていたので、後処理で消しました。関数エディタをでたらめにいじったので、そのせいかもしれません。

仕上げに Picasa でグロー効果をかけて、雪のギラギラ感を強調しました。

以上が「フラッフィーと私」の制作秘話です。きっといまごろ、フラッフィーと少女戦士は、美しく冷たい Vue の世界を勇敢に旅していることでしょう。

どうもありがとう!  Leoni Venter