この「メイキング・オブ」は、毎週お一人の Vue コミュニティメンバーにスポットライトを当てるページです。 世界中でたくさんの人々が、Vue の製品ラインを使って素晴らしい作品を紡ぎ出しています。そんな皆さんに作品の作り方を解説してもらい、ノウハウを共有できれば、というのが、このページの狙いです。

自然画の達人として、Vue コミュニティで広く知られている Laurent Rodriguez 氏。その実力は、『2010 Vue 3D Environment Contest』の最優秀賞獲得で一層ゆるぎないものになりました。今回はそんな Rodriguez 氏が、Vue のディスプレイスメント機能に切り込みます。 

 

メイキング・オブ "The Gate" by Laurent Rodriguez

この作品は、Vue のディスプレイスメントマッピング機能の使用例として制作しました。 サンプルとして、Cornucopia 3D で販売している私のコレクション、『Sculpted Rocks_Collection2』を使用します。このシーンには、すでに砂漠の EcoSystem が設定してあります。 それ以外の岩石オブジェクトは、シーンから削除してください。
このシーンは、256 x 256 の標準地形が 2 つに、ディスプレイスメントを適用したメタブロブオブジェクトが 1 つという、極めてシンプルなものです。 奥の地形は、最初に作った手前の地形を複製(Ctrl + D)して拡大しました。

インスタンスごと拡大したので、奥行きも感じられ、遠くの岩石までよく見通せます。

基本要素の配置が済んだところで、次に立方体やドーナツなどのプリミティブを使って、主題となる奇妙な形の岩をメタブロブで作成します。 私は、メインカメラから 21m 離れたところに配置しました。 次に、オブジェクトに回転や拡大などの変形を加えて、面白い構図になるように整えます。

同時にこの段階で、Sculpted Rocks_Collection2 のディスプレイスメント質感を適用しました。
ここから先は、オブジェクトの形状に加えて、このディスプレイスメント質感がメタブロブオブジェクトの全体的な形を制御することになります。 つまり、仕上がりにアタリをつけるためには、シーンを作りこむ前の早い段階で、質感を決めておくことが重要です。後から調整できるにしても、大枠が定まっているほうが迷いが少なくなるからです。

下の図は、この時点の質感設定を示したものです:

要所要所でプレビューレンダリングをすることも、重要なポイントです。作業の進捗や形状の変化が段階的にわかります。 私の最初のプレビューレンダリングは、こんな結果になりました:

メタブロブオブジェクトを使うときは、[メタブロブ設定] も見逃してはいけません。このパネルは、エンベロープの距離、混合オブジェクトの影響度、効果(加算/減算)など、グループを構成するオブジェクト同士の影響の度合いを決めるものです。 質感に大きく関わるのは、ディスプレイスメントの設定だけではありません。 このパネルのパラメータも、質感と連動して最終的な結果を大きく左右します。

ディスプレイスメントを適用したオブジェクトを、[ワールド - 標準] のマッピングのまま極端に拡大するとき、とりわけ、ディスプレイスメントマッピングが強くて細かい(振幅が大きくディテールが小さい)場合は、見た目が不自然にならないように、[縮尺] も拡大する必要があります。

私は最初、メタブロブのなかの個々のプリミティブに対して同じパラメータを設定しようとしていましたが、メタブロブ全体にひとつの質感を割り当てたほうが結果がいいと、最終的には判断しました。 加えて、最大限の効果を得るためには、[品質ブースト] など、ディスプレイスメントマッピング設定の調整も必要でした。

メイン光源の位置と角度に基づき、さらにいくつかのプリミティブをメタブロブに追加して、岩の外観を仕上げました。 これで、どことなく巨神兵のような、印象的な形の岩になりました。 長いアーチの部分は、その奥に広がる異次元世界への入り口(ゲート)なのかもしれません ...

メタブロブオブジェクト以外に Sculpted Rock オブジェクトを左側に配置して、構図を引き締めました。 こうすると、大きくて奇妙な形の岩が画角の外にも転がっているのではないかと、見る人の想像を掻き立てることができます。

次に、Poser から書き出した小型ロボットをシーンに追加しました。岩の大きさをわかりやすくするのが目的ですが、この場所の不思議な雰囲気づくりにも一役買っていると思います。

仕上げに、岩のアーチの向こうに元からあった砂漠の EcoSystem を EcoSystem ペイントの消しゴムツールで削除して、視界をスッキリさせました。 同じく、元から設定されていた大気の、空の色と彩度も調整しました。 照明モデルの [グローバルラジオシティ] はそのままです。 レンダリング設定も、デフォルトの [ブロードキャスト] から設定を変えて画質を調整しました。
もっとも、あまり意味はなかったようですが ...

このプロジェクトを通して学んだことを要約すると、奇妙で印象的な形をつくるための絶対則はない、ということです。 すべては、作ろうとしているオブジェクトの種類と質感で決まります。 ですから、やはり、ディスプレイスメントマッピングとプリミティブ、この両面から設定を熟考することが欠かせないと思います。 デフォルトの [ワールド - 標準] マッピングを、[オブジェクト - パラメトリック] など他のタイプに変えてみても効果的かもしれません。

今回、Vue のディスプレイスメント機能が持つポテンシャルをこのような形で掘り下げてみるというのは、私にとっても楽しく、有意義な経験でした。 このチュートリアルをお読みになるみなさんにも、私が感じた面白さが伝わることを願っています。 追記:私が作ったメタブロブオブジェクトは ここからダウンロードできます。ご自由にお使いください。

Friendly greetings! 
LaurentR.