この「メイキング・オブ」は、毎週お一人の Vue コミュニティメンバーにスポットライトを当てるページです。 世界中でたくさんの人々が、Vue の製品ラインを使って素晴らしい作品を紡ぎ出しています。そんな皆さんに作品の作り方を解説してもらい、ノウハウを共有できれば、というのが、このページの狙いです。

巨大な都市の作り方や、スケール感・奥行き感の出し方について悩んだことはありませんか? 今回のゲスト Arthur Dorety 氏は、物語に添える挿絵として、こんな方法で中世風の都市を完成させました。

 

メイキング・オブ "Messnia" by Arthur Dorety

『海辺に栄えた中世の幻想都市』というイメージは、ずっと私の頭のなかに渦巻いていました。  この作品は、当時執筆していた物語の挿絵用に作ったものですが、現在は、この都市が滅びてしまう設定の続編を書いているところです。

頭のなかにしっかりとした構図があったので、レイアウトは簡単でした。 はじめに、大きな標準地形を作りました。いま思えば、直接生成地形で作ったほうがリソースを節約できてよかったのでしょうが、まあ、過ぎたことです。 地形をもう 2 つ追加して、上の図のように、左右から張り出す遠方の島を作りました。

ここまでできたら、あとは、地形の上に建造物などを置いて、質感を設定するだけです。 古い都市には、舗装された道路と未舗装の道路が混在しているものですが、 このシーンは都市部から離れているということで、すべて未舗装の、埃立つ土の道路にするのがいいと思いました。 ということで、質感は Quadspinner の River Rock Sand コレクションに入っている Sandpaper に、Vue 付属の草を少し混ぜて作りました。

建造物は、特別に目立たせたいものから配置していきました。 Fantasy Castle や、Tadmar City コレクションに収録されている大型の建物などを使っています。 前景には、ディテールの細かい建造物をバランスよく配置しました。

次に、地形の質感に EcoSystem レイヤーを追加し、Tadmar City コレクションから、教会や錬金塔などを除いた居住建築物だけを配置しました。教会と錬金塔は、オブジェクトとして別個に配置しています。 インスタンスの大きさについては、テストを何回か繰り返して、建造物と、このあと配置する Poser フィギュアの大きさが矛盾しないようにしました。 メートル尺で、現実世界と相対的な大きさを保つようにしたかったからです。 下の図は、質感と EcoSystem の設定を示したものです。

住居を EcoSystem ペイントで描き込むのは面倒だと思ったので、メインの街路と街の中心部にあたる場所に、大きさを合わせた立方体プリミティブを配置して、透明にしました。 こうすれば、[配置] ボタンを押したとき、住居オブジェクトはそこを避けて配置されます。 トライアンドエラーを何回か繰り返し、余分なインスタンスを削除すると、イメージに近い街になりました。 カメラから見えないところに配置されたオブジェクトは、すべて削除しました。

次に、大気をセットアップしました。 ゴッドレイは必須でした。日の出を想定していますが、夕暮れ時にも見えますね。お好きなように解釈してくださって構いません。 下の図は、大気エディタの各タブの設定を示したものです。 私は、ボリュメトリック効果がたっぷりかかった薄明るい空が好きなのです。

続いて灯台を追加しました。私は Pharos Lighthouse を使いましたが、灯台ならどんなものでもいいと思います。先端に点光源を配置しました。 さらに、街の灯りを表現するために 27 個の点光源を要所要所に配置して、そのうちの 2~3 個をボリューメトリック光源にしました。

仕上げにメインの地形の質感エディタを開き、EcoSystem レイヤーを追加しました。.vob 形式に変換した Poser フィギュアを配置するためのレイヤーです。 この作品に限らず、私はこれまでにも、さまざまなポーズの Poser フィギュアを作成して Vue オブジェクトに変換し、自前のライブラリを充実させてきました。 これらのフィギュアは、シーンの『エキストラ』として活躍します。 ディテールの細かいクローズアップ用からロングショット用までさまざまですが、手軽に使えて便利なのです。 新規レイヤーに配置すれば、建物のレイヤーとは別に調整することができます。 EcoSystem ペイントで配置して複製したフィギュアも、うまく馴染んでいると思います。

Lいよいよレンダリングです。 設定は下の図を参考にしてください。 アンチエリアス設定の [品質閾値] に設定した 90% はちょっとやり過ぎかもしれませんが、私は通常、80%~100% に設定しています。100% にすることも少なくありません。 設定は、そのときの大気の複雑度に応じて変えています。 値を変えて、効果がはっきり目に見える場合もあれば、そうでない場合もありますが、 人や建物など、被写体がカメラに近いときは、設定を高くしています。 カメラから遠ければ低い値でもごまかせますし、風景のシーンで高い値を設定すると、かえって違和感を感じる絵になることもあります。 この設定で、レンダリングに 11 時間かかりました。 ちなみに、私のマシン環境は Core i7 デュアルクワッド(原文ママ) 920/2.67 GHz PC、メモリは 9GB、OS はVista Ultimate の64 ビットです。

以上で説明を終わります。 最後までお付き合いくださってありがとうございました。 Art