この「メイキング・オブ」は、毎週お一人の Vue コミュニティメンバーにスポットライトを当てるページです。 世界中でたくさんの人々が、Vue の製品ラインを使って素晴らしい作品を紡ぎ出しています。そんな皆さんに作品の作り方を解説してもらい、ノウハウを共有できれば、というのが、このページの狙いです。

インスピレーションはいろいろな形で存在しています。写真を見て「これを Vue で再現したい!」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。 今回のゲスト Britta Jacobs 氏もその一人。自然が生んだ天下の奇観に魅せられた彼女は、どんな手順で見事なVue シーンを作り上げたのでしょうか?独創的で役立つヒントがいっぱいの、楽しいチュートリアルです!

 

メイキング・オブ "Elves Chasm" by Britta Jacobs

私は、www.bing.com のトップページに日替わりで表示される美しい写真を眺めるのが大好きです。 2010年の 5月30日のトップ画像は Michael DeYoung というフォトグラファーの写真だったのですが、コロラド川の Elves Chasm という小渓谷を写したその作品を見た瞬間、ハートを鷲掴みにされました。この美しい景色を Vue で再現してみたいと、そのとき思い立ったわけです。

手始めに、立方体オブジェクトで岩の構成を大まかにとって、メタブロブにしました。
下のスクリーンショットは、テクスチャを設定する前のオブジェクトの状態です。

納得できる形ができたので、岩の質感選びに移りました。Quadspinner の River, Rock and Sand - Collection 1 に収録されていた 『Vintage rock』 の紹介文『背景や薄暗い洞窟など、何世紀にもわたる川の流れに削られた硬い岩肌の質感に最適』を読んで、これがピッタリだと思いました。 『Vintage Rock』のデフォルト色は濃いグリーングレーですから、グランドキャニオン調に変える必要がありました。

[全体色] を黄褐色に変更すると、カラー生成関数のプレビューに表示されていたオリジナルの濃いグリーンが薄いモスグリーンに変わり、理想的なカラーコンビネーションになりました。 

上の図は、質感を設定したあとのプリレンダリング結果です。


地面となる地形を追加し、画角に合わせて引き伸ばしました。地形エディタで 2 番目の質感に [景観] コレクションの [植物] を適用して、滝の水が落ちるエリアにペイントします。

1 番目の質感には、同じく [景観] コレクションから [瓦礫] を選択し、[全体色] を変更して岩肌と色を合わせました。

次のステップは、水面づくりです。 深緑に濁った水にするために、[汚染された水] を適用しました。 

主な要素のモデリングができたところで、太陽をほぼ真上に配置して、日の当たりかたを自然な感じにしました。

岩の壁面の植生は、EcoSystem ペイントで描き加えています。 Small Grassfield Plants の 0203 を使いました。

次はいよいよ、主題となる滝の作成です。


使用したのは、Renderosity で Nanus 氏が無償配布している滝のアルファマップです。設定をある程度調整できるので周囲となじませやすく、使い勝手がよいので重宝しています。 シーンにアルファ平面を追加して、[アルファ平面設定] パネルで使いたいアルファマップを指定します。

設定画面は上の図のとおりです。[アルファ画像] を反転させて [ビルボード] をオンにしないとうまくいかない、ということに気づくまで、何度もトライアンドエラーを繰り返しました。 まあつまり、白状すると、私はマニュアルを読まない人間なんです ...!

周囲と違和感なくなじませるためには、設定の変更やリサイズが必要で、私にとっては、ここは意外に難関でした。


太陽を真上に動かしたので、滝の背後にまで光が当たりすぎて、主題の滝が引き立たなくなってしまいました。そこで、背景に影を作る作業が必要になりました。 これには、カメラに映らないところに壁を作ることで対処しました。上と横に立てて光を遮ります。

さらに、滝の背後の岩は、質感の色を暗くしました。

滝の水が、灰色がかった冴えない色をしていたので、点光源を 3 つ追加し、それぞれの [強度] を 1 にして滝の前に配置したら、真っ白になっていい感じになりました。

構成の締めの作業として、植生を少し追加しました。右上に Crawling Bushes を、滝の左側に AsileFX の Rainforest Collection から 2 種類を、そして右側には EcoSystem ペイントで数種類の草を描き込みました。

次に、大気の設定を行いました。ベースは [デフォルト] です。 [グローバルラジオシティ] を選択して、[露出] を少し下げ、[光源バランス] を [環境光] 寄りにして、[環境光源色] を暗めのトーンにしました。

雲は追加していません。[天空、霧ともや] タブの設定も少し変更しました。[天空の高度] を下げ、[減衰量] を上げて [減衰の高度] は下げました。 もやの設定を下げる一方で [霧の密度] は少し上げ、[空気遠近法] を 10 に、[品質ブースト] を 1.11 に変更しました。


風は、レンダリング時間を節約するために無効にしました。

いよいよ最終レンダリングです。[画像サイズと解像度] は Panavision の 1600 x 681、[レンダリング画質オプション] は [最終レンダリング] のデフォルト設定のままで、保存形式を .tif にしました。[ポストレンダリング設定] は下の図のように設定しました。

最終レンダリングの結果(レタッチ前)が下の図です。

レタッチに使用したツールは Paintshop Pro X3 です。画面左手の岩に出ていた不自然な光の筋は、クローンブラシを使って上から植物を描き入れました。滝の下のほうの鋭く尖った岩角を隠すために滝筋を 2 本に増やし、水面との接点に水しぶきを描き入れました。また、それに伴って水面の映り込みも修正しました。
新規レイヤーを追加し、水面のところどころに緑色と濃い茶色を足して周囲となじませ、最後に、大きな日焼けブラシを画像全体にかけて、色みを濃くしました。

Thanks! Britta